じめから経営コンサルタントの仕事は「マーケティング」と「セールス」分野が自己テーマでした。長年IT業界に従事し、システム側から企業の業務を見てきて、特に関心の高い分野だったからです。
一方で、自身にとってITとは別の新たな柱である「中小企業の経営管理」全般について、知識や知恵を整理、習得していくうちに、何か「足りないもの」を感じていました。
中小企業の「モノづくり」は隠れた日本の底力などとメディアに取り上げられたりします。しかし成熟した社会ではモノを作っても売れません。ターゲットへのアプローチや、伝えること、納得してもらうことは単純でなく、複雑化かつ多様化しています。人々の「選別する目」や「購入する心理」が一筋縄では把握できないのです。
インターネットを通じて根本的なコト(情報、距離、価格、経験、コミュニケーションなど)が大きく変化してしまいました。そして政治と経済のムードが変わってきた今、蓄積していた力を発揮し飛躍する大きな方向性(コンセプト)を持てないものでしょうか。
っかけは、米国アップル社の製品とその感性でした。故CEO、S.ジョブズ氏のニュースのころピークの感がありましたが、新たに知った驚くべきことは、世界中に億単位のアップルユーザーがいるということです。
ここでひらめいたのは、「モノづくり+デザインの計り知れない力」に加えて、国内を含めこのような数のアップルユーザーがその優れた「デザイン」に当たり前に接しているということでした。コンサルタントとしてこれをどう捉えるか?
偶然も重なり、デザイン力と経営やモノづくりに関する書籍にも出会いました。著者として紺野登氏、奥出直人氏、棚橋弘季氏、大口二郎氏、等々。更にデザインの価値に関して、スウェーデンのグラフィックデザイナーである故オーレ・エクセル氏にも大きな影響を受けました。彼が常に主張していた「優れたデザインは経済効果をもたらす」というメッセージです。
かし自身の周りにこのような観点を持った人がいなくて、経営コンサルタント仲間からもこの類の話を聞くことはありませんでした。
ちょうど産業関連のイベントで見て回った各企業の製品でも、特長的な機能が強調されている一方、その形、色、イメージなどのデザインに感心することはほとんどないのです。
更に、偶然出会った知的財産に関する書籍に「中小企業の製品・サービスが強みである理由」というアンケート結果のグラフが掲載されていました。そこで「良いデザイン」を上げているのは最下位、2%程度しかありません!
このような日本の中小企業とモノづくりの現状に、「デザインの力」をどう訴え、何が役立つのだろうか?誰が共感してくれるのか?大きな壁と挫折感のような感覚に力が抜けました。
ただ考えようによれば、国内には「デザイン力を訴える対象の中小企業がこんなに多くある」ということかもしれない・・・
のどん底に一つの灯りが見えました!それは遠くに瞬く灯台のようで、その方角に「青い海」と未来の灯りを感じました。
自分が「形」にしようとしているモデルを実現している、或いは同様のコンセプトと感じられるモノづくりを展開している企業を見つけ出しました。また直接そういった企業と経営者の方に出会うこともありました。
やはり、デザインは力を持っている、それに魅力を感じる顧客やユーザーが実際にいる、そして口コミやネットで拡がりが起こっている・・・まさに考えているそのものを目の当たりにしました。更にそこには顧客のニーズを超える、モノの本質に対する経営者の魂を感じました。
その結果、自身の言葉で「知識デザイン経営」という名のモデルを提唱することになったのです。
「知識デザイン経営」、それは経営+デザインを主軸にアートの価値も加えるのです。ベースになるのは企業の創造力と変身力です。
はり新たな視点で、複雑な経済や産業環境を突破する試みを推進してみよう。規模の経済ではなく「質の経済」を目指し、中小企業と新たな製造業の形を追求してみよう。
中小企業が既に持っている「知」である技術やノウハウをベースに、新たな指針を設定し、適切な思考力を使って、オドロキの、体験したことのない新商品や新市場を創り出すことをミッションとします。
既に実証できる企業が存在しているのは力強いことで、可能であるということです。更にミッションとしてそういう企業を「称賛」することも重要な活動とします。
ビフォア/アフターを考える時、それは意外と近くにあり、紙一重かも知れません。
では、どう進めるべきか?見た目や表現方法だけでなく、「人を前提に思考し」「人の心を動かし」「きちんと経営を管理する」という観点から、「デザイン/アート+経済性(経営)」を重要な指針と考えます。そして経営者の方の世界観と新価値を追求するために、思考方法と活動を啓蒙しご支援します!
これから日本は先進国のお手本になるべきです。国内400万社を超える中小企業から知識デザイン経営が始まり、デザインの地位が上がり、「クール・デザイン・ジャパン」とでも言う「日本らしいデザイン/アート+経済性」により、新たなデザイン先進国へと変わっていくことを切望します!
『“美しい”商品創ろう、日本の会社』、これがスローガンです。