中小企業のものづくりをいろいろな角度で論じていると、結構当たり前のように「イノベーション」「創造性」という言葉が出てきます。
言うは易しで、何か新しいことや大きなチャレンジを表現する時にはその言葉がスマートな印象を与えます。しかし具体的な施策は様々で容易ではなく、正解を見つけるのは非常に難しいことです。
日本のように既に成熟した社会では、モノを作って、いかに顧客にアプローチし、消費者やユーザーに届けるかは、単純ではなく複雑化かつ多様化しています。人々の「選別する」目や「購入する」心理が一筋縄では把握できなくなっているのです。またインターネットを通じて根本的な部分(情報、距離、価格、経験など)が大きく変化している状況もあります。
自身のテーマのひとつに「マーケティング」がありますが、そもそもマーケティングとは「需要を創造し市場のニーズと企業の製品を効果的に結びつける活動」です。そしてこの「需要を創造し」というところに「人の心(心理)を動かすもの」が介在するのだと考えています。
しかしポイントは、マーケティング分野だけに限ったことではありません。製品を企画、開発、製造していく段階から関係しており、自身の基幹業務系ソフトウェアの経験を通じて長年取り組んできた、スピード、効率化、コスト削減、改善といった施策もこれにつながってきます。もっと遡ればその企業がなぜ存在するのかという、企業理念から始まっているのだと思います。
こういう一連のストーリーの中にひとつの大きな要素が潜んでいる、それが「デザイン/アート」のセンスであると思うのです。「人の心を動かすもの」だと思うのです。しかし「見せ方」や「見える部分」だけのことではありません。
私のコンセプトであり提案は、それを企業理念から結び付けて、顧客ニーズと企業が蓄積してきた知識・ノウハウをインプットとし、一方で「デザイン/アート」をウェイトの高い重要指針の一つとしてこれに加味し、「思考」というツールを使って、いままでにない「オドロキ」や「感動」のあるモノをつくっていくということなのです。そしてその結果「イノベーション」が生まれてくると信じています。
これらは柔軟な思考をお持ちで、迅速な動きのできる「中小企業の経営者の方」こそ、是非指向していただきたい、実践していただきたいと強く思います。或いは事業後継に直面し、自社をあらたに継承し牽引される、「若々しく鋭い感覚をお持ちの経営者の方」にお奨めしたいと思うのです。
私はこのコンセプトを「知識デザイン経営」と呼ぶことにし、企業における一連の考え方や流れ、活動や管理を総合的に構築することを提言しています。
引き続きその内容や活動のお話をしながら、輝きを取り戻すための「ストーリー」をご紹介していきたいと思います。